ズワイガニとベニズワイガニの原料特性の違い|用途別の使い分け

エスケイ・インターナショナル株式会社

かに加工原料の引き合いで並ぶ「ズワイ」と「ベニズワイ」は、名前が似ているだけの近い種類ではなく、生息水深も漁法も漁期も異なる別種です。同じ「かに」としてひとくくりに比較すると、必要な数量が確保できる時期や原価の前提を読み違えます。ここでは公的な資源評価に記載された事実をもとに、両者の原料特性の違いと、用途別の使い分けを整理します。

生息水深と漁法が異なる|原料の獲れ方が違う

生息する層がほとんど重ならない

水産研究・教育機構「令和7(2025)年度ベニズワイガニ日本海系群の資源評価」によると、ベニズワイガニ(Chionoecetes japonicus)は北海道から島根県沖にかけての日本海、オホーツク海、ならびに銚子以北の本州太平洋沿岸の深海に生息し、日本海では水深400〜2,700mに広く分布、分布の中心は1,000〜2,000mとされています。

一方、同機構「令和7(2025)年度ズワイガニ日本海系群A海域の資源評価」では、ズワイガニ(Chionoecetes opilio)の日本海における本系群の分布範囲について、大陸棚斜面の縁辺部および日本海中央部の大和堆であり、水深200〜500mに多いと記載されています。なお同資源評価の概要版によれば、A海域とは本州日本海沿岸の富山県以西・島根県以東に分布する群を指します。

同じズワイガニ属でも、生息する層がほとんど重ならない。ここが原料としての違いをすべて生んでいます。

漁法が違えば原料の入り方も変わる

生息水深の違いは、そのまま漁法の違いになります。前掲の各資源評価によれば、ズワイガニ日本海系群A海域では漁獲の多くが沖合底びき網(かけまわし)によるもので、小型底びき網およびかごでも漁獲されています。対してベニズワイガニは、若干量の混獲を除きほとんどがかご網で漁獲されます。

底びき網とかご網では、一度に揚がる量も、個体にかかる負荷も、水揚げ後の処理の組み立ても異なります。受入規格や歩留まりの想定を詰める際は、産地名だけでなく漁法まで確認しておくと、ロット間のばらつきの原因を切り分けやすくなります。

漁期と漁獲規制の違い|原料が動く時期がそろわない

ズワイガニは冬季に集中する

ズワイガニ日本海系群A海域の漁期は、農林水産省令で雄が11月6日から翌年3月20日、雌が11月6日から翌年1月20日と定められています。漁獲対象は、雄では甲幅90mm以上のカタガニとミズガニ、雌ではクロコです。さらに大和堆では省令により本種の漁獲が禁止されており、A海域では漁期やサイズについて、漁業者の自主的な取り組みによって省令よりも厳しい制限が設けられています。

つまり国産ズワイガニの原料が動くのは、冬季の限られた期間に集中します。

ベニズワイガニは9月から翌年6月

ベニズワイガニでは、省令により雌は全面禁漁、雄についても甲幅90mm以下は禁漁とされています。かご網漁業は操業水域によって、東経134度以西の兵庫県から島根県の地先と大和堆・新隠岐堆などの沖合漁場で行う大臣許可漁業と、青森県から兵庫県の各県地先で行う知事許可漁業に分かれます。前掲の資源評価では、2007年漁期から鳥取県境港に水揚げする全船を対象に個別割当制による漁獲量の上限が設定されたと記載されており、その漁期年は9月から翌年6月として扱われています。

漁期がおよそ10か月に及ぶことは、加工原料として月次の入荷計画を組むうえで実務的な差になります。ズワイガニが冬季の約4か月半に集中するのとは、原料を手当てできる窓の広さが違います。

供給規模と流通の階層が違う

数量の桁も異なります。前掲の令和7年度資源評価によると、ベニズワイガニ日本海系群について、我が国EEZ(一部日韓北部暫定水域と重複)における漁獲量は、1980年代には40,000トンを超えていたものの、2003年には12,055トンまで減少し、2007年に16,902トンへ増加した後は横ばい、2015年以降は再び減少して2024年は10,614トンでした。対してズワイガニ日本海系群A海域の漁獲量は、2024年漁期で2.2千トンです。

この2つは前提が違うため、そのまま並べて比べることはできません。ベニズワイガニは暦年での集計で、我が国EEZ全体(大臣許可水域と知事許可水域の合計)の数字です。ズワイガニは漁期年(7月から翌年6月)での集計で、しかもA海域に限った数字であり、新潟県以北のB海域や太平洋系群は含みません。さらにベニズワイガニの漁場では韓国も操業しており、その漁獲量は2024年で28,456トンと別に計上されています。

それでも、加工向けにまとまった数量を見込みやすいのがベニズワイガニ側であることは、流通の実態からも裏づけられます。一般社団法人大日本水産会の魚食普及推進センターは、ホンズワイガニを加能ガニ・松葉ガニ・越前ガニ・間人ガニといった高級ブランドとして紹介する一方、ベニズワイガニは価格が買いやすく加工原料として広く使われる種として紹介しています。同じズワイでも、流通の階層が違うということです。

あわせて押さえておきたいのが、ベニズワイガニの資源管理が許可水域ごとに分かれている点です。前掲の令和7年度資源評価では、2024年の資源水準は大臣許可水域が53.6%で限界管理基準値(56%)を下回る一方、知事許可水域は94.5%と評価されています。2026年のABC(生物学的許容漁獲量)は、大臣許可水域が25,587トン、知事許可水域が6,167トンです。

ただしこの25,587トンは、日本の大臣許可水域と韓国の合計漁獲量の直近5年平均である29,329トンに係数0.87を掛けた値で、日本単独の枠ではありません。実績平均から1割強を絞る計算であり、枠に余裕があるという意味ではない点に注意が必要です。同じ魚種名でも、どの水域由来かで供給の見通しは一様ではありません。

用途別の使い分けと調達計画への落とし込み

▶ 通年の量産アイテムはベニズワイガニを軸に
漁期が9月から翌年6月と長く、かご網でまとまった数量が水揚げされるため、棒肉・爪肉・ほぐし身・かにみそといった形態で計画的に手当てしやすい種です。産地と輸入の構造はベニズワイガニの産地と輸入事情で詳しく整理しています。

▶ 姿・ブランド訴求が目的ならズワイガニ
冬季の限られた漁期と甲幅規制のもとで漁獲され、ブランド銘柄として流通する種です。通年で回す量産アイテムの主原料に据えると、数量と原価の両面で無理が出ます。季節限定品や高付加価値ラインに絞るほうが設計が通ります。

▶ 国産だけで組み立てない
国産ズワイガニの漁獲量は長期的に減少しており、国内需要は輸入で補われています。背景は国産ズワイガニの漁獲量減少と輸入依存の高まりにまとめました。国産と輸入原料を組み合わせ、供給が細ったときの代替を先に決めておくのが現実的です。

▶ 種を選ぶ前に原料形態を決める
同じ種でも、棒肉・ほぐし身・みそ・エキスでは規格も価格も別物です。先に必要な形態と歩留まりを固めてから種を選ぶと、比較の軸がぶれません。エキスの形態差は業務用甲殻類エキスのスペック比較を参照してください。かにみそ・えびみそを風味の芯に使う設計はえびみそ・かにみそについてをご覧ください。

甲殻類の加工原料調達はエスケイ・インターナショナルへ

エスケイ・インターナショナル株式会社は、創業37年にわたり甲殻類の加工原料を輸入・卸販売してまいりました。カナダ産ロブスターのえびみそ、アイルランド産ブラウンクラブのかにみそをはじめ、用途と数量に合わせた原料のご提案が可能です。

「この製品にはどの種のどの形態が向くのか」「通年供給できる原料に切り替えたい」といったご相談も承っております。原料設計の段階からお気軽にお問い合わせください。