えび加工原料の引き合いでは、産地やサイズと並んで「養殖か天然か」が仕様の前提になります。同じむき身、同じサイズ表記であっても、養殖と天然では数量が決まる仕組み、価格が動く要因、取引先に提示できる証明の種類が異なります。ここを曖昧にしたまま年間の調達計画を組むと、増産時に同等品を押さえられない、あるいは納入先の調達方針と噛み合わないという形で後から効いてきます。えび原料の供給構造を養殖と天然に分けて整理します。
世界の水生動物生産は養殖が5割を超えた
国連食糧農業機関(FAO)は2026年6月16日、「世界漁業・養殖業白書(SOFIA 2026)」を公表しました。同報告によると、2024年の世界の漁業・養殖業生産量は2億3,500万トンで過去最高となり、このうち水生動物は1億9,500万トンでした。養殖による水生動物の生産量は初めて1億トンを超えて1億300万トンに達し、水生動物の総生産量の53パーセントを占めています。漁船漁業(捕獲漁業)による生産量はおよそ9,200万トンです。
えび加工原料についても、養殖由来のものと天然漁獲由来のものが並行して流通しています。両者は単純な代替関係ではなく、供給量の決まり方そのものが違う別系統の調達ルートだと捉えたほうが実務に合います。
養殖えびは計画生産のため数量とサイズが読める
養殖えびは、種苗の池入れから収穫までの工程が生産者の管理下にあります。池入れの時期と面積を決めた時点で、収穫の時期とおおよその数量に見通しが立つため、出荷計画を前もって共有しやすいことが調達側の利点です。収穫後にサイズ選別を行うため、同一の規格帯をまとまった数量で確保しやすい点も、量産ラインでは効いてきます。
一方で、振れる要因も養殖特有です。病害の発生、水温や降雨といった天候要因、飼料や燃料のコスト、そして生産国側が次期にどれだけ池入れするかという判断が、翌シーズンの供給量と相場に反映されます。前シーズンの実績がそのまま次期の前提にならないという点は、契約時に織り込んでおく必要があります。
▶ 年間契約は総量よりサイズ帯の確保条件を詰める
総量だけを取り決めても、必要なサイズ帯が別の買い手に流れれば配合は組めません。数量と併せて、どの規格帯を優先的に引き当てるかを条件として明文化しておくことが、量産時の欠品対策になります。
天然えびは漁期と資源管理が数量を決める
天然えびは、漁期と資源管理の枠組みによって供給量の上限が外側から決まります。買い手側が発注量を増やしても、その年に獲れる量以上は市場に出てきません。したがって天然原料を使う設計では、必要量を漁期に合わせて前倒しで押さえる運用が前提になります。処理形態も一様ではなく、船上で凍結するものと、水揚げ後に陸上で処理するものがあります。漁獲物を選別して規格に振り分けるため、サイズ構成は漁況の影響を受けます。
資源管理の枠組みが整備される動きも進んでいます。海洋管理協議会(MSC)は2025年3月31日、アルゼンチンのパタゴニア地方チュブ州沿岸で操業するアルゼンチンアカエビ(Pleoticus muelleri)漁業がMSC漁業認証を取得したと発表しました。同発表によれば、10年にわたる改善を経ての取得で、沿岸のえび漁業としてはアルゼンチンで初、アルゼンチンアカエビ漁業としては世界初の認証となります。認証対象となった沿岸漁業の年間漁獲量はおよそ53,600トンです。
さらにMSCは2026年2月17日、アルゼンチン政府管轄水域(沖合)のアルゼンチンアカエビ漁業もMSC漁業認証を取得したと発表しました。同発表によれば、沖合漁業は同国最大の船団を擁し、34社からなる認証申請者グループで構成されており、2024年の漁獲量は139,000トンを超えています。沖合で獲られたアルゼンチンアカエビは、その多くが漁獲後すぐに船上で冷凍されます。同じ種であっても、沿岸か沖合か、船上で凍結するか陸上で処理するかによって原料としての条件は変わります。天然原料の見積を比較するときは、産地名だけでなくどの漁業の区分によるものかまで確認しておく必要があります。
持続可能な漁獲管理が産地でどのように運用されているかについては、アイルランドの水産業と持続可能な漁獲管理でも取り上げています。
調達実務で効いてくる四つの違い
| 観点 | 養殖 | 天然 |
|---|---|---|
| 数量の決まり方 | 池入れ計画に連動し事前に見通しが立つ | 漁期と資源管理の枠組みで上限が決まる |
| サイズ規格 | 同一規格帯をまとまった数量で確保しやすい | 選別後の構成が漁況の影響を受ける |
| 価格の変動要因 | 病害・天候・飼料や燃料コスト・池入れ判断 | 漁況・漁獲枠・操業コスト |
| 第三者認証 | ASC(養殖を対象とする代表的な認証) | MSC(天然漁業を対象とする代表的な認証) |
▶ 認証は養殖と天然で制度が別
水産養殖管理協議会(ASC)は、WWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援のもと、2010年に設立された独立した国際的な非営利団体で、責任ある養殖に関する認証を運営しています。天然の水産物についてはMSCが、水産資源と環境に配慮し適切に管理された持続可能な漁業で獲られたものを対象に認証を行っています。いずれも認証品と非認証品が混ざらないよう流通過程を管理するCoC認証が別途必要になるため、原料に認証を求める場合は、自社と中間業者の対応可否まで含めて確認しておく必要があります。水産エコラベルの制度はこの二つに限られないため、取引先が求めている制度がどれなのかを先に確認しておくと手戻りがありません。
養殖と天然の別を仕様書に落とし込む
実務では、規格書に「養殖・天然の別」「産地」「漁期または収穫時期」「サイズ規格の呼称と実測範囲」を並べて記載し、代替品を受け入れる条件をあらかじめ決めておくと、供給が振れたときの判断が早くなります。名称の書き分けは取引先との認識合わせにも直結するため、ロブスターとオマール海老の違いで整理した原料名称の考え方もあわせてご確認ください。
また、えびみそのように風味を担う原料では、原料由来の違いがそのまま製品の風味設計に影響します。原料特性はえびみそ・かにみそについてのページにまとめています。輸入統計から見た調達構造については2025年の水産物輸入動向で解説していますので、産地選定の材料としてご覧ください。
甲殻類加工原料の調達はエスケイ・インターナショナル株式会社へ
エスケイ・インターナショナル株式会社は、1988年の設立以来、甲殻類の加工原料を輸入・卸販売してきました。カナダ産ロブスターのえびみそ、アイルランド産ブラウンクラブのかにみそをはじめ、用途と規格に応じた原料をご提案しています。供給構造の異なる原料をどう組み合わせるかを含め、調達計画の段階からご相談いただけます。原料の仕様や供給条件についてはお問い合わせよりご連絡ください。