えびやかにを加工すると、身やみそを取り出したあとに殻が残ります。この殻は捨てられるだけではなく、キチン・キトサンといった素材の原料として使われています。そして、殻から作られた素材が食品添加物として加工食品に入ると、アレルギー表示に関わってきます。この記事では、まず結論と自社取扱原料を使った具体例をお伝えし、そのあとで表示の決まりを短く整理します。
まず結論:殻の利用で押さえる3つのポイント
▶ 1. 加工で出る副産物は、高付加価値の素材の原料として注目されている
国連食糧農業機関(FAO)は、水産物の加工では魚種や加工方法により全体の30〜70%にあたる副産物が出ると報告しています(甲殻類に限らない水産物全般の数字です。出典:FAO「The State of World Fisheries and Aquaculture 2026」)。そのうえで、副産物はキチンやキトサンなど付加価値の高い製品の原料になるとしています。
▶ 2. 殻から作る素材は、食品添加物としても使われている
キチンは、えび・かに等の甲殻類の甲殻(またはイカの甲)から炭酸カルシウムとタンパク質を除いて得られる既存添加物です。キトサンはそのキチンを脱アセチル化したもので、どちらも増粘安定剤などの用途で既存添加物名簿に収載されています。
▶ 3. えび・かに由来の添加物にも、アレルギー表示が必要
えび・かにに由来する添加物は、添加物の表示が免除される加工助剤やキャリーオーバーに当たる場合でも、特定原材料の表示が必要です。原料の段階で「何に由来する素材か」を規格書で確かめておくことが実務の要点です。
ブラウンクラブとロブスターの原料で考える具体例
当社が取り扱う原料を例に、殻の利用と表示の関係を見てみます。例2・例3の配合は考え方を示すための仮のもので、実際の商品設計を示すものではありません。
例1 ブラウンクラブの身とみそを取り出したあとに残る殻
アイルランド産ブラウンクラブ Brown Meat と White Meat は、同じブラウンクラブから部位ごとに取り出した、加熱・選別済みの冷凍原料です。身とみそを取り出す加工は産地で行われるため、殻は産地の加工の段階で残ります。
アイルランド政府の水産振興機関であるBIMは、2024年の発表で、アイルランドの水産加工で出る副産物の半分が、主に魚粉やペットフード、漁業用の餌といった価値の低い用途に使われていると説明しています。またBIMが2023年に紹介した同国の甲殻類加工会社1社の事例では、導入した設備でかにの胴・爪・脚・殻まで加工できるようになり、処分費のかかる廃棄物だった部分を魚の飼料向けの二次加工原料に変えられる見通しだと説明しています。副産物の使い道は、アイルランドの水産加工でも取り組みが進められているテーマです。
例2 ロブスターみそのビスクに、かに由来のキトサンを加える場合
カナダ産ロブスターみそは、加熱前の生冷凍の原料です(生食用ではありません。必ず十分に加熱してください)。アレルギー表示の上では、ロブスターは「えび」に含まれます。
仮に、ロブスターみそを使ったビスクに、増粘安定剤としてかに由来のキトサンを加えたとします。この場合、原料はえび系だけのつもりでも、添加物の由来から「かに」の表示が必要になります。消費者庁の通知(消費者庁ウェブサイト「食品表示基準について」別添 アレルゲンを含む食品に関する表示)では、表示例として「キトサン(かに由来)」が示されています。えびを原料とする場合は「(えび由来)」です。用途名を併記する場合は「増粘剤(キトサン:かに由来)」のように「:」で区切る形が示されています。表示を見直すきっかけは、主原料だけでなく添加物の変更でも生じます。
例3 グルコサミンは「甲殻類由来」とは限らない
グルコサミンも既存添加物ですが、食品添加物公定書の定義では、甲殻類の甲殻などから得たキチンを原料とするもののほか、糸状菌の培養液から得たものも含まれます。名前だけでは由来が分からないため、えび・かに由来かどうかは規格書や仕入先への確認で判断します。消費者庁のQ&A(消費者庁ウェブサイト「食品表示基準Q&A」別添 アレルゲンを含む食品に関する表示)では、特定原材料由来の添加物でも、抗原性試験等により抗原性が認められないと判断できる場合は表示義務が免除される一方、抗原性の有無が不明な場合は表示が必要とされています。
業界の動き:かに殻の利用は国内でも進んできた
国内では、鳥取県が公式サイト「とりネット」の「独自技術」のページで、境港に水揚げされるベニズワイガニの殻を利用して国内で生産されるキチン・キトサンの50%以上を同県で生産していると紹介しています。農林水産省の広報誌でも、食品加工後に大量に発生するカニ殻を、廃棄コストをかけずに有効利用する研究が取り上げられています。ベニズワイガニの部位ごとの用途はベニズワイガニの産地と輸入事情|かに加工原料の安定調達に向けた視点でも触れています。
殻の利用が広がると、甲殻類由来の素材が思わぬところで原料に入る場面も増えます。原料の切り替えや添加物の変更のたびに、由来の確認を習慣にしておくと安心です。
ここから詳しく:アレルギー表示の決まりを短く整理
消費者庁の通知「食品表示基準について」(別添 アレルゲン関係)と食品表示基準Q&Aから、殻由来の素材に関わる点だけを絞って紹介します。
▶ 特定原材料は9品目
えび、カシューナッツ、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)です。
▶ 業者間で取引する原料にも表示義務がある
消費者に直接販売されない食品の原材料も含め、食品流通のすべての段階で表示が義務付けられています。
▶ 微量に含まれるものも確認と記録が必要
加工助剤やキャリーオーバーについても最終製品まで表示が必要なため、製品に微量に含まれる特定原材料も確認し、記録を保管する必要があるとされています。
表示の全体像は食品表示法の甲殻類アレルギー表示|えび・かに原料の実務ポイント、工場での管理は甲殻類アレルゲン管理の現場対応|交差汚染を防ぐゾーニングと設備設計で解説しています。細かな要件は、消費者庁の通知とQ&Aの最新版で確認してください。
※本記事の添加物とアレルギー表示に関する内容は、消費者庁ウェブサイトの公表資料(上記の通知・Q&A、食品添加物公定書など)をもとに、エスケイ・インターナショナル株式会社が要約・編集して作成しています。
甲殻類加工原料のご相談はエスケイ・インターナショナル株式会社へ
エスケイ・インターナショナル株式会社は、1988年の設立以来、甲殻類の加工原料を輸入し、食品加工メーカーや商社・卸のお客様へ卸販売しています。取り扱いはカナダ産ロブスターみそ、カナダ産ロブスター白身、アイルランド産ブラウンクラブ Brown Meat、アイルランド産ブラウンクラブ White Meat で、いずれも業務用の加工原料です。カナダ産ロブスターみそは生冷凍のため生食用ではありません。必ず十分に加熱してご使用ください。
数量・荷姿・価格・納期は、用途や想定使用量を伺ったうえで案件ごとにご相談させていただきます。評価用サンプルは在庫状況・案件内容に応じてご相談ください。規格書等の資料が必要な場合も案件ごとに対応いたします。原料の特性は業務用のかにみそ・えびみそ原料をお探しの方へを、ご相談はお問い合わせよりご連絡ください。