えびみそやかにみそなどの甲殻類原料を新しく検討するとき、規格書の数値だけでは採否を決めきれません。最終的には、試作品に入れたときの香りや後味を人の感覚で確かめる「官能評価」が判断材料になります。ただ、甲殻類原料は風味が強く、口に残りやすいため、評価の組み立て方を誤ると「何となく良い」「前の原料と違う気がする」といった結論にとどまりがちです。ここでは、原料の比較や切り替えの場面で使える官能評価の進め方を、手法の選び方と甲殻類原料ならではの注意点に分けて整理します。
甲殻類原料の官能評価が難しい理由
甲殻類原料の評価では、一つ目の試料の風味が次の試料の判断に影響しやすい点が課題になります。国際規格 ISO 4120:2021(官能評価分析の3点試験法)は、この手法について「強い持ち越しや残りやすい風味をもつ製品では使用が限られる」(has limited use with products that exhibit strong carryover and/or lingering flavours)と記しています。甲殻類のみそ系原料はまさにこの性質をもつため、手法の選び方と試料の出し方の両方で工夫が要ります。
もう一つは、原料の状態が評価結果を左右する点です。解凍の条件や加熱の程度が試料ごとに違えば、比べているのが原料の差なのか、前処理の差なのかが分からなくなります。評価の前に、条件をそろえる手順を決めておくことが出発点です。
知りたいことから試験方法を選ぶ
国内では JIS Z 9080(官能評価分析-方法)が、2点試験法、3点試験法、順位法などの手法を扱っています。2004年の改正では ISO 4120 の1983年版などの国際規格を基礎として用いており、用語は JIS Z 8144(官能評価分析-用語)で定められています。実務では、評価で何を知りたいのかを先に決めてから手法を選びます。
原料を切り替えても差が出ないかを知りたい
現行原料から別の原料へ切り替えるときは、3点試験法が候補になります。3つの試料のうち2つが同じもの、1つが異なるものという組み合わせで出し、異なる1つを選んでもらう方法です。ISO 4120:2021 は、原材料・加工・包装・取り扱い・保管を変えたときに、知覚できる差が生じるか、生じないかを判断する用途を挙げています。当てずっぽうで正解する確率が3分の1あるため、結果は評価者の人数と正解数から統計的に判断します。差がないことを確かめたい場合は、差を見つける場合とは判定の考え方や必要な人数が異なります。有意差が出なかったことだけでは、差がないとは言い切れない点に注意が必要です。前述のとおり持ち越しの強い試料では使いにくいため、甲殻類原料ではベースに希釈した状態で評価するなどの工夫と組み合わせます。
2つの試料で特性の強さを比べたい
2つの試料を比べ、指定した特性がどちらで強いかを答えてもらうのが2点試験法です。比べる観点を「甲殻類らしい加熱香の強さ」のように一つに絞ると、評価者の答えがそろいやすくなります。
複数の候補を並べて特徴を描きたい
候補が3つ以上ある場合は、特性の強さの順に並べてもらう順位法や、項目ごとに強さを点数で付ける尺度による評価が使えます。尺度で評価すると、香り・うま味・苦味・後味といった項目ごとに原料の違いを記録でき、採用後のロット比較にも使える基準になります。
甲殻類原料で確認したい評価項目
評価項目は、試作品で求める風味から逆算して決めます。甲殻類原料では、次のような項目を立てておくと比較の軸がぶれにくくなります。
▶ 香り
加熱したときに立つ甲殻類らしい香りの強さと、好ましくない生臭さの有無を分けて評価します。一つの項目にまとめると、香りが強い原料ほど評価が割れる原因になります。
▶ 味と後味
うま味、甘味、苦味の強さに加え、飲み込んだ後にどれだけ風味が残るかを確認します。後味の長さは、ソースやスープに配合したときの印象を大きく左右します。えびみそとかにみその風味の傾向はえびみそとかにみその風味の違いで解説しています。
▶ 色調と質感
ベースに溶かしたときの色の出方と、粒感や粘りなどの口当たりを見ます。色は照明で見え方が変わるため、同じ場所・同じ照明で比べます。
試料の準備と評価の進め方
▶ 解凍と加熱の条件をそろえる
比べる原料は同じ方法・同じ時間で解凍し、同じ条件で十分に加熱してから評価します。生冷凍の原料は、加熱前の状態で味見をしないことを手順書に明記しておきます。冷凍と解凍が品質に与える影響は輸入水産原料の冷凍・解凍が品質に与える影響と選び方をご覧ください。
▶ 原料単体と試作品の両方で見る
原料をそのまま口にすると風味が強すぎて差が分かりにくいため、前項の条件で十分に加熱した原料を、湯や試作品のベースに一定の割合で溶かして試料にします。希釈の割合は全試料で同じにし、記録に残します。
▶ 試料の記号と提示順を工夫する
試料には中身が推測できない3桁の数字などを記号として付け、提示する順番を評価者ごとに入れ替えます。試料の間には水で口をすすぐ時間を取り、風味の持ち越しを減らします。
▶ 評価者のアレルギーを事前に確認する
えび・かには食品表示基準で表示が義務付けられた特定原材料です。評価者を選ぶ段階で甲殻類アレルギーの有無を確認し、該当する人は評価に加えないようにします。表示の考え方は食品表示法の甲殻類アレルギー表示、製造現場での交差汚染の防ぎ方は甲殻類アレルゲン管理の現場対応で整理しています。
▶ 結果を受入基準につなげる
採用を決めた原料の評価結果は、規格書の数値と並べて保管しておきます。その記録を基準にすれば、入荷ごとのロット比較で「前回と差がないか」を同じ手順で比べられます。
甲殻類加工原料のご相談はエスケイ・インターナショナル株式会社へ
エスケイ・インターナショナル株式会社は、1988年の設立以来、甲殻類の加工原料を輸入し、食品加工メーカーや商社・卸のお客様へ卸販売しています。取り扱いはカナダ産ロブスターみそ、カナダ産ロブスター白身、アイルランド産ブラウンクラブ Brown Meat、アイルランド産ブラウンクラブ White Meat で、いずれも業務用の加工原料です。カナダ産ロブスターみそは生冷凍のため生食用ではありません。必ず十分に加熱してご使用ください。
評価用サンプルは、在庫状況・案件内容に応じてご相談させていただきます。想定している用途や配合のイメージをお知らせいただくと、検討が進めやすくなります。原料の特性は業務用のかにみそ・えびみそ原料をお探しの方へを、ご相談はお問い合わせよりご連絡ください。